Tuesday, March 18, 2008

ネコの喉

ほおをなでる海風はいまだにひんやりしているが、陽光は日一日と明るさと暖かさを増している。寒く厳しい冬を家族で身を寄せ合いながら耐え忍んできた湾岸の猫たちも、その変化を察知して身も心も軽やかにみえる。

 外で暮らす猫にとって冬は最大の難敵である。その間に命を落とす仲間も少なくないからだ。それだけに春を迎える喜びは何ものにも替え難い。

 一息いれようと丸太に腰を掛けると、「つきあうよ」と言わんばかりに、顔なじみの猫たちが次々と傍(かたわ)らに飛び乗ってきた。そう、猫は日なたぼっこが大好きだ。お日さまはどんな境遇の猫にも等しく優しい。

 「楽しそうだね」と声をかけ人さし指をさしだすと、のどをゴロゴロ鳴らしながらほおをすり寄せ、しまいにはのけ反っておなかをみせた。ほほ笑ましいその姿からは、待ちこがれた春への思いがあふれているようだ。(写真家 太田威重/SANKEI EXPRESS)
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 ■おおた・たけしげ 写真家。1944(昭和19)年、東京生まれ。桑沢デザイン研究所卒。70年代後半から写真を撮り始め、80年代後半、バブル期の都市の荒廃を目にして以来、東京と猫をテーマに写真を撮り続けている。写真集に「東京-猫もよう」(平凡社)など。隔月刊誌「猫生活」(緑書房)に「東京町猫録」を連載中。

産経ニュース

ネコ、ぎゅっとしたい!

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